ビットコインの分裂とは

ブロックチェーンの分岐とは」で、同時に2つのブロックが追加されることによって偶発的にブロックチェーンの分岐が起こる場合について説明しましたが、それとは異なり、意図的に分岐が作り出される場合というのがあります。

なぜこのような分岐が作られるのかというと、仮想通貨の仕様変更のためです。

仕様変更が必要な理由:ブロックサイズ問題

それぞれの仮想通貨には、仕様上、ブロックサイズ(1つのブロックが含むデータの容量)に関する制約があるのですが、通貨の利用者が増えて取引量が増えていくと、取引データの容量が限界に近づくという問題が起こります。

例えば、ビットコインのブロックサイズの上限は1MBとなっていますが、実際のブロックに含まれる取引データの量は、この数年どんどん大きくなっています。下の画像は2010年10月から2017年10月にかけての、週ごとの送金額の合計(青い線)と1ブロックあたりのブロックサイズの平均値(黄色の線)をグラフ化したものです。

TradeBlock.comより】

ブロックサイズ(黄色の線)が上昇を続け、上限の1MBに迫ろうとしているのがわかります。

ブロックサイズが限界に近付くと、処理に時間がかかり、取引が遅延するなどの問題が生じてしまいます。このような問題を「ブロックサイズ問題」や「スケーラビリティ問題」と呼びます。

仕様変更による仮想通貨の分裂

ブロックサイズ問題を解決するためには、例えば「ブロックサイズの上限を1MBから2MBに引き上げる」などの仕様変更を行わなければなりません。

そのとき、下記のようにブロックチェーンの途中からルールを書き換えてしまうことができればよいのですが、このような変更は難しいのが現状です。

なぜなら、ビットコインには中央管理者がおらず、システムの重要な変更には大多数の関係者(主要な開発者やマイナーなど)の合意を取る必要があるのですが、多くの場合それは困難だからです。

多くの場合、仕様変更を望む声もある一方で、その案に賛成しない人々もいるという状態になります。そのような場合に、仕様変更を支持する人たちが、もとの仕様のブロックチェーンとは別に、「ブロックサイズの上限を2MBとする」という新たな仕様を適用したブロックチェーンを作り始めることがあります。これが意図的に作り出されるブロックチェーンの分岐です。

このような分岐が発生すると、ブロックチェーンは仕様の異なる2つのブロックチェーンに「分裂」したということになります。ブロックチェーンが分裂したということは、もとの仮想通貨とは別の新たな仕様の仮想通貨が誕生したということで、これが「仮想通貨の分裂」です。

例として2017年8月2日に、ビットコインと比べて取引処理能力やセキュリティ面の機能が向上された仮想通貨として、ビットコインからビットコインキャッシュが分裂しました。

分裂の影響は?ー保有していたコインが分裂した場合

自分が保有していた仮想通貨が分裂した場合には、どのようなことが起こるのでしょうか。

分裂が起きたときに実際にどのようなことが起こるのかは、分裂によって誕生した通貨の安全性や信頼性、利用している取引所がどのような対応を取るかによるため、明確なことはそのときにならないとわかりません。

ただし、過去の分裂の際に起こったことを参考に、今後の分裂でどのような影響があるかをある程度予測することは可能です。ここでは、2017年8月にビットコインキャッシュが誕生した際の分裂を振り返ってみます。

2017年に入り、取引量の増加によってビットコインの処理能力の限界が近づいたことなどから、ビットコインの取引処理能力を高めるための“segwit”と呼ばれる仕様変更が提案されました。

しかし、大手マイニンググループはこの案に賛成せず、ビットコインのブロックチェーンから、segwitとは異なる仕様変更(ブロックサイズの引き上げ)を行った新しいブロックチェーンを分岐させました。こうして誕生したのがビットコインキャッシュです。

この分裂の際、分裂以前からビットコインを保有していた人には、同じ数量のビットコインキャッシュが付与されることになりました。

取引所がビットコインキャッシュを取り扱うかどうかは各取引所が決めることとされており、各社ともしばらく「対応については検討中」としていましたが、最終的に多くの取引所がビットコインキャッシュの取扱いを開始しました。

ビットコインキャッシュは一時1BCH=10万円近くまで上昇し、2017年10月現在は1BCH=約4万円となっています。分裂以前からビットコインを保有していた人は、タダで付与されたビットコインキャッシュが値上がりしたことによって利益を得ることができたというわけです。

ただし、今後ビットコインやほかの仮想通貨が分裂する際、必ずしも新たに誕生した通貨がもとの通貨の保持者に付与されるとは限りませんし、分裂で誕生した通貨の価値がどうなっていくかは、誰にもわかりません。

利用者としては、分裂が発生するたびに新たなコインがタダで手に入り、そのうえそのコインの価値が上がっていくのであれば嬉しいでしょうが、残念ながらそのような展開は考えにくいです。

今後分裂の事例が増えれば増えるほど、新たに誕生した通貨すべてを各取引所が取り扱うというのは難しくなるでしょう。また、分裂で誕生した通貨は、「十分なマイナーがおらず取引が安定しない可能性がある」「開発者がリリース以前に自らマイニングを行っていて利益を独占しようとしている場合がある」といった指摘もなされています。

2017年10月24日、ビットコインのブロックチェーンからさらに分岐が発生してビットコインゴールド(BTG)という新たな仮想通貨が誕生しました。しかしながら、ビットコインゴールドについては現時点で安全性・安定性が不明瞭なため、国内の取引所は「付与しない」または「付与する方針だが、取引の提供については未定」とするところが多くなっています。

仮想通貨の分裂の前後には、その通貨の価格が大きく変動することがあります。その値動きをうまく利用することができれば利益を出すことができますが、分裂前後の取引が取り消される可能性や、分裂によって誕生した通貨の安全性などの問題もあるため、十分注意が必要です。